【講師コラム】プログラミング教材開発者が教える!集中が切れる子どもへの具体的なサポート
子どもたちにプログラミングを教えていると、こんな場面に直面したことはありませんか?
例えば、授業の途中で集中力が切れてしまい、席を立ったり関係のないことをし始めてしまう子どもたち…。
1人にかかりきりになってしまうと、他の子が退屈して授業全体の進行が滞ってしまうこともありますよね。
集中力が切れる原因は様々ですが、実は教材や指導法にちょっとした工夫を加えるだけで、このような問題を大きく改善することができます。このコラムでは、その具体的な方法をお伝えします。
プログラミング教室で子どもの集中力が切れる原因は?
小学校低学年の子どもたちにプログラミングを教えるとき、集中力のムラは避けられない課題です。体調や疲労感、さらにはその日の気分によっても大きく左右されます。例えば、体育やプールの授業後や夜更かしの翌日には、集中力が持続しにくいことも多いでしょう。
また、教材や授業内容が「難しすぎる」「退屈すぎる」「何をやるのか分かりにくい」と感じると、子どもたちは小さなきっかけで集中力を失ってしまいます。
300時間以上にわたる子どもの学習分析結果から、集中力が切れる主な原因を以下にまとめました。
- 説明の文章が長い(読まない/読めない)
- 視覚的でない(パッと見てわからない、図や絵がない)
- 動きやメリハリがない
- 授業や課題の尺が長い
- 間違えやすい構造(うまくいかないことが続くと挫折しやすい)
現代の子どもたちは「動画世代」です。学習もエンタメも動画が中心となっているため、特に小学生の低学年では、長い文章を読んで理解する「読解力」や困難に立ち向かう「完遂力」がまだ十分に育っていないことが多いのです。
しかし、これらの力は知的な成熟とともに育つものです。その成長を待ちながらも、今すぐプログラミングを楽しく学んでもらうためには、「プログラミング教材」と先生の指導に工夫を加えることが不可欠です。裏を返すと、授業進行がうまくいくとプログラミング学習を通じて論理的思考力や創造力・表現力といった本来の学びだけでなく、達成感を通じて子どもの粘り強さや意欲を育むことができるのです。
プログラミング教材が「スムーズな授業」のためにできること
私たちは、創業以前の2016年からスクラッチの教材を開発し続けています。実際に子どもたちの反応や理解度といった成果を分析し、改良を何度も重ねてきました。わかりやすくて、理解が深まり、知識が定着するのは当然のことですが、その学びの過程をいかにスムーズに楽しく進めるかは「教材力」が重要であることは確かです。私たちの知見を結集したプログラミング教材では、どのような工夫で授業に貢献するのかを整理してゆきます。
視覚的であること
教材は、図や動きのあるアニメーションで工夫した説明をたくさん入れて、文字を読まない子どもでも理解できるように、文字数を少なく文字サイズを大きく構成しています。もちろん、上級者向けの場合は、対象年齢(成熟度)に合わせて、しっかり読解力を鍛えるような考慮をしますが、特に低学年向けには視覚的な工夫を入れ文字情報だけに頼らないことを心がけています。
自立学習+ポジティブなリアクションがあること
スムーズな授業のためには、子どもが自立し学べる工夫も重要です。先生が個人にかかりきりにならず、学習者が自信をもって興味関心をもち主体的に学べるような教材です。知識習得は、小さなステップを積み重ねるように構成し、理解したことは、すぐに実際に手を動かして確認する流れになっています。子どもが開発した小さなコードは、自動判定されるのですが、判定時には必ずポジティブな演出を添えています。正解なら「ピンポンピンポーン」という快い音とともに笑顔のうさぎが丸印のプラカードをもって登場、子どもの頑張りを賞賛します。
「よくできたね」「すばらしい」など複数の掛け声(読み上げ音声)で気持ちを盛り上げます。間違えてしまった時も「みなおしてみよう!」「あれれ?」など問いかけを基本としています。
間違いやすい/イライラにつながる部分を効果的に排除
スクラッチ教材を開発し、効果測定を継続している中で、子どもの間違いやすいポイントや傾向が明らかになります。その教材や授業の学びの主テーマである本質とは違う部分で、そのようなポイントに引っ掛かって、小さな間違いが続くと子どもはイライラしてしまうものです。そうなると集中力をキープするのが困難になり、自信をもって学び進もうという意欲が減退してしまうものです。そこで、散見される見間違いは、視覚的に強めの注記を入れて注意を促します。これは先回りをして試行錯誤の機会を奪うというのとは異なります。試行錯誤は、その教材の学びテーマ、つまり本質部分にのみ集中して行ってもらうための工夫です。
例をあげると、スプライト(キャラクター)を選び間違えてしまい、他のスプライトにコードを組み立ててしまうという問題があります。
そこで適切なタイミングで繰り返し、選択を確認する説明を挿入することで、間違いに気づかせるとともに、スプライトを選択する必要があること、つまりコードを作りたい対象への意識付けを促します。
それから、変数にデータを代入する「(へんすう)を◯にする」と数値を加算する「(へんすう)を◯ずつかえる」を間違えてしまうことも多発します。変数のブロックは非常に見間違いやすくて、組み立てたコードをながめてもその違いになかなか気付けないのです。そこで、赤字で違いを強調して注意を促しています。たったこれだけの工夫で大半の子どもが、ブロックの違いをしっかり意識してその単元の学習に集中できるようになるものです。
面白い要素を入れる
非常に大切なのが「面白い」、場合によっては少しだけ「不謹慎気味な」要素を入れることです。困難な学びテーマの課題でも、題材や演出が面白いと子どもは案外楽しんで取り組み、その面白い要素とセットで記憶にも残るものです。
例えば、多角形を描く教材では『怪獣を爆破してやっつける』というダイナミックなミッション、論理積と論理和の条件学習では、少し怪しい見た目の犯人を逮捕するというミッションが設定されています。このように、退屈になりがちな学習テーマでも、演出によって子どもたちが楽しみながら積極的に学べるよう工夫しています。
プログラミング教室の先生にできることとは?
子どもの集中力を切らさず、楽しそうに授業を進める先生には共通点があります。以下にそのポイントを紹介します。
プロジェクターなどを効果的に使い、次にやることを視覚的に伝える
教科書やスクラッチの画面を効果的にプロジェクターなどに表示して、「次に何をすればいいか」を視覚的に示します。これにより子どもの集中力を維持し、授業をスムーズに進められます。
やさしい言葉でメリハリをつけて強調
子どもが迷いそうな点、覚えてほしいことや学びのポイントとなる点は、ゆっくりと繰り返し伝えています。決して、難しい専門的な言葉やあいまいな言葉を使わずに、易しい言葉で明確に繰り返し伝えることが重要です。ゆっくりと繰り返し伝えることで、子どもが迷わず理解しやすくなります。
問いかけを上手に使う
聞くだけの受身の授業は退屈ですし印象に残りませんから、適度に問いかけを織り混ぜて、子どもに主体的に考え、参加させる工夫をしています。授業に問いかけを取り入れ、子どもが考え、発言する機会を作ります。例えば「次にどのコードを組むと思う?」「セルフレジにはどんな計算があるかな?」と聞き、出た意見には必ずポジティブな反応を示しましょう。
小さな成功をたくさん褒める 、決して否定はしない
子どもの取り組みを積極的に褒めます。「できた」「考えた」などの行動を評価し、自信とやる気を育てます。間違いがあっても否定せず、ポジティブに励ましましょう。自信はやる気にもつながり良い循環を生みます。プログラミング授業に取り組めること自体が、素晴らしいことですから、そのままの気持ちを伝えることが大切です。
そして全員に目配りをし、一人一人に向かって必ず一言は、褒めや労いを伝えてください。
自主性を大切にする
子どものマウスを奪って先生がやってしまうのは、できるだけ避けたいことです。自主性や達成感を奪わないようにしてください。教材の修復が必要な場合などは「マウスを借りて、先生が操作してもよい?」と尋ねてから操作をするようにしましょう。
まとめ
プログラミング授業では、子どもの集中力が切れる場面もありますが、工夫次第でその時間を楽しく有意義なものに変えることができます。
私たちは、先生方を陰から支える「黒子」として、教材の改良を続けることを使命としています。
しかし、授業を進める上での主役は何よりも先生方です。先生の温かい声掛けや丁寧な指導が、子どもたちの学びを輝かせます。私たちの教材が、そのサポートとなり、子どもたちに有意義な時間を届けられることを願ってやみません。共に素晴らしい授業を作り上げていきましょう!