【講師コラム】スクラッチによるプログラミング教材開発で大切なこと
〜目的と力量にあった「楽しく」「子どもの未来につながる」コンテンツを〜
今回は、子どもにプログラミングを教えたい先生やプログラミングイベントを主催したい方向けに、どのようなスクラッチ教材がよいのか、教えやすく効果を上げるには何が大切か、教室やイベント成功のための「教材」にフォーカスしてお伝えしたいと思います。
「プログラミングができるように」が使命、そのために開発した膨大な教材
当社の使命は、シンプルに言えばまず「すべての子どもたち」が「プログラミングができる」を実現することです。
もちろん全員がプログラマーになるわけではありません。言語のトレンドも変わりノーコードも増え、生成AIのサポートもあります。
でもそんな環境だからこそテクノロジーを柔軟に活用し課題に取り組む「プログラミング(的な思考)ができる」ということ、
これって誰にも重要になるのではないでしょうか。
2016年のプレ開校以来、私たちはずっとこの使命を胸にプログラミング教材を作って教室やオンラインで教え続けています。
他の会社や出版社の方などから依頼されてコンテンツを作ることもありましたし、ボツになったものも含めたら500本くらいは作ったのではないでしょうか。
日々、改良案が出てきてバージョンアップも頻繁ですから、おそらく総数としてはその3倍〜5倍くらいになるかもしれません。
膨大な教材を開発、改良する中でプログラミング教材に大切な点が見えてきました。
プログラミング教材のテーマは身の回りにあるものがベスト
周囲を見回してみると家の中も通学路もスーパーマーケットもコンピュータのプログラムがたくさんあります。
ロボット掃除機、エアコン、炊飯器、信号機、自動販売機、自動ドア、レジなど数え切れません。
子どもたちは「勝手に動いている」と思いがちですが、そこでは「プログラム」の通りにコンピュータが動いていますよね。
ものの仕組みを考えて、流れを整理して、プログラミングする時、身の回りのテーマを取り上げるのは効果的です。
日常的に触れている身近なものを自分で作るという体験は、仕組みの理解につながり実感でき、子どもの力になるからです。何より身近なものを自分で作れるって嬉しいですよね!
実際の例をあげると、変数を学習する教材ではセルフレジをテーマにしています。これが子どもたちに非常に好評なのです。修了後にも時々プロジェクトファイルを開いては金種を変え、商品を追加するといった改造をしたり、買い物を楽しんだりしている様子が見られます。100円を10,000円に改造するには構造をしっかり理解する必要があります。そこを自主的に実現したいというモチベーションで取り組むって身につきかたが違います。
身の回りにあるものを自分で作れる喜び、効果の大きさを実感しています。
面白いこと・好きなテーマを選ぶことも重要
やはり「ゲーム」は人気があり子どもが集中するテーマです。例えば「条件分岐」では「迷路ゲーム」「冒険ゲーム」など様々なゲーム制作の教材があります。
ゲームの中でもプレイして面白いもの、本格的なものが人気です。何かを習得するときに反復練習は欠かせませんが、つまらないテーマだと飽きて、やる気が出ないこともあります。学校や塾の宿題が山積みの日は子どもも疲れてスイッチが入らないなんてこともありますから。
その点、「本格的なゲーム」教材は夢中になっているうちに知らず知らず反復練習もできてしまいます。
ゲームを1から全部作るのは至難の業で、知識と忍耐力が必要です。そこで年齢やスキルに合わせて学びのキモにフォーカスして作れるようにお膳立てをしたゲーム教材というのも効果的です。
いきなり全部作るのは大人でも難しいのですから、子どもの力量や成長段階に合った楽しい、身につく教材、自信をもってステップバイステップで進める、ちょうどよい匙加減の教材が重要なのです。
難しい学びテーマでも、演出で盛り上げる
情報1プログラミングのサンプルでもよく見かけるリスト(複数のデータを扱える仕組み)のデータ参照/更新問題。基本の学びですが、子どもにはとても難しいものです。ところが当社ではこの難しいテーマの教材が意外と人気です。RPG(ロールプレイングゲーム)の武器屋を舞台に武器のリストをキャラが読み上げたり、武器の注文をリストに追加して復唱したりとゲームシーンを再現しています。これがよくある「クラスの算数の点数をリストに入れました…」のような問題だと、場合によってはうんざりされてしまうかもしれません。
つまり繰り返し学んで身につけてほしいことを、難しい内容を、いかに楽しんで いかに自信を持ってステップアップできるか、教材にかかっているのです。
RPG(ロールプレイングゲーム)の武器屋を舞台にしたリストの教材
想定外の反応も。試行錯誤の重要性
良い点を書いてきましたが、これは一朝一夕で実現できるわけではありません。当初は失敗の連続でした。効果的だと思ったものが、子どもには困難を極め悔し涙を見ることも、時間がかかってしまって飽きられてしまこともありました。大切なのは生の子どもの反応と学習効果の分析です。教えている先生の意見も重要です。
これらを真摯に受け止めてトライアンドエラーで改良を重ねることは教材開発の生命線です。子どもの反応というのは、「そうきたか!」と大人の想定外であることも本当に多いものです。迷うポイントやストレスにつながるポイントもだんだん見えてきます。
スムーズに学びテーマに集中してもらうために、それ以外のストレスを排除する工夫、取捨選択も重要です。私たちは300時間以上、モニターの受講者と向き合い教材を磨き上げています。教材を作ったらどんどん試用して声を集める、改良を重ねるこの工程も非常に重要なのです。
目的・力量に合わせて「楽しく」「未来につながる」教材を
教材開発における大切な点ついてお伝えしてきました。
プログラミング教室、イベント、企業のCSRやPRのワークショップなど、有益な機会を創出するために目的や受講者の力量に合ったプログラミング教材の役割が大きいものです。どのような場合でも、「楽しく」「子どもの未来につながる」を重視し、私たちは教材を開発しています。
これからも、子どもたち、保護者や先生、主催者、提供者にとってより良い教材制作のために日々励んでいきます。
もしも教材で迷うことがあればご相談ください。もちろんオリジナル教材の開発のご相談も大歓迎です。